防災テックを行っている企業の事例は?気候テックとの違いもご紹介
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近年注目されている「防災テック」。
防災とテクノロジーを組み合わせた言葉で、IT技術を用いて災害の被害を最小限にする取り組みです。
この記事では、防災テックと気候テックの違いや、それぞれの事例について詳しくご紹介します。
防災テックとは?
「防災テック」という言葉は、「防災」と「テクノロジー」を組み合わせた造語です。
近年、AI(人工知能)やビッグデータ、IoT(モノのインターネット)などの最先端技術を活用して、災害を未然に防いだり、被害を最小限に抑えたりする取り組みが進んでいます。
これは「X-Tech(クロステック)」と呼ばれており、異なる分野にテクノロジーを融合させるビジネスの一環でもあります。
気候変動の影響で、豪雨や土砂災害などの発生頻度が増え、被害が拡大しやすくなっています。
そうした中で、防災テックはますます重要視されており、日本でも多くの企業が取り組みを進めています。
例えば、AIを活用した津波や浸水の予測システム、SNSを利用した迅速な災害情報の共有、ドローンを使った被害状況の確認など、さまざまな技術が防災・減災に活用されています。
このような技術の発展により、より早く、正確な対応が可能になり、多くの人の命を守ることにつながるのです。
気候テックとの違い
「気候テック」もまた、テクノロジーを活用した新しいビジネス分野の一つですが、防災テックとは目的が異なります。
防災テックが「災害を予測・防止し、被害を抑える」ことを目的としているのに対し、気候テックは「気候変動を抑えること」が主な目標です。
気候変動の影響を抑えるためには、二酸化炭素(CO2)の排出量を減らしたり、持続可能なエネルギーを活用したりすることが重要です。
気候テックは、再生可能エネルギーの導入、電気自動車の開発、環境にやさしい農業技術の普及など、さまざまな分野で活用されています。
日本でも、2050年のカーボンニュートラル(温室効果ガスの排出を実質ゼロにする目標)に向けて、多くの企業や政府が取り組みを強化しています。
例えば、「グリーンイノベーション基金」による技術開発支援や、新たな環境政策「GX推進法」による企業支援など、気候変動対策に向けた投資が進められています。
防災テックや気候テックはどのような役割を持つのか
近年、異常気象や災害のリスクが高まっており、世界的な課題として注目されています。
2024年1月に発表された「グローバルリスク報告書」では、今後10年間で最も大きなリスクとして異常気象が挙げられるなど、気候変動や環境問題への対策が急務となっています。
このような背景のもと、防災テックや気候テックの役割が重要視されています。
防災テックは、災害を予測して被害を最小限に抑える技術を提供し、気候テックは環境負荷を減らして持続可能な社会をつくるための技術を支えています。
例えば、AIを活用した災害予測システムや、クリーンエネルギーの開発、垂直農業などがその一例です。
政府の支援もあり、自治体や研究機関、大企業と連携しながら、社会課題を解決するビジネスとしての発展も進んでいます。
今後も、新たな技術や企業の登場により、防災・減災、気候変動対策の分野でさらなる革新が期待されています。
防災テックの事例
防災テックは、先進技術を活用して災害への備えを強化する取り組みです。
日本でも多くの企業が防災テックを活用し、新しいサービスを提供しています。
例えば、AIを使った災害予測システムや、IoT技術を活用した避難誘導システムなどが開発されています。
ここでは、防災テックの事例を2社ご紹介します。
Laspy
Laspyは、2021年に設立された防災テック企業で、災害時の備蓄管理に特化したサービスを提供しています。
同社は「どこにいても安全が当たり前の社会をつくる」という理念のもと、防災備蓄の管理を効率化するシステムを開発しました。
特に注目されているのが「あんしんストック」というサービスです。
これは、企業や自治体向けに、食料や救急用品、通信機器などの備蓄品を一括管理するものです。
備蓄品の賞味期限管理や保管スペースの問題を解決し、必要なときにすぐに活用できる仕組みになっています。
災害時には、保管された備蓄品を配布する機能も備えているため、実際の災害発生時にも役立つサービスとなっています。
Laspyは、防災や気候変動対策に取り組む企業が集まるカンファレンスにも積極的に参加しており、今後も防災都市のインフラ整備に貢献することが期待されています。
Arithmer
Arithmerは、数学の力を活用して社会課題を解決することを目指す防災テック企業です。
2016年に設立され、AIを活用した高度な防災システムの開発を進めています。
特に注目されているのが「浸水AI」という技術です。
このシステムは、過去の浸水データを基に、河川が氾濫した際の浸水の広がりや水深を高速で予測することができます。
従来のシミュレーションに比べ、より短時間で正確な予測が可能になるため、自治体や企業の防災対策に大きく貢献すると期待されています。
この技術は、2021年の防災テック関連のカンファレンスで紹介されたほか、2023年には大阪で開催された行政向けの防災イベントで優秀賞を受賞するなど、高い評価を得ています。
Arithmerは今後も、AIや数学の力を活用して、より高度な防災技術の開発を進めていくと考えられています。
気候テックの事例
気候テックは、テクノロジーを活用して気候変動の影響を抑え、環境負荷を軽減する取り組みを指します。
さまざまな分野で活用されており、例えば再生可能エネルギーの利用を促進する技術や、環境にやさしい農業技術の開発などが進められています。
今回は、その中でも水素エネルギーの活用に取り組む「ElectricHydrogen」、次世代農業技術を推進する「AeroFarms」をご紹介します。
ElectricHydrogen
ElectricHydrogenは、アメリカのスタートアップ企業で、環境にやさしいグリーン水素の製造技術を開発しています。
グリーン水素は、再生可能エネルギーを活用して作られるため、製造過程で二酸化炭素(CO2)を排出せず、地球環境に配慮した次世代エネルギーとして注目されています。
ただし、従来の水素よりも製造コストが高いという課題がありました。
この課題を解決するため、ElectricHydrogenは産業用途向けのグリーン水素を大量に、低コストで製造する技術を開発中です。
グリーン水素が普及すれば、火力発電や工場のエネルギー供給をクリーンなものへと転換でき、脱炭素社会の実現に大きく貢献することが期待されています。
AeroFarms
AeroFarmsは、気候変動による農作物への影響を軽減するために「垂直農業(VerticalFarming)」を開発・推進している企業です。
垂直農業とは、屋内の高層施設で農作物を育てる技術で、天候に左右されずに安定した農業生産が可能になります。
この技術には多くのメリットがあります。
例えば、農薬を使用せずに安全な作物を育てられる、水の使用量を最大95%削減できる、従来の農業よりも少ない土地で大量の収穫が可能などです。
また、生産拠点を都市部に設置することで、輸送コストやCO2排出量の削減にも貢献しています。
AeroFarmsは、2004年の設立以来、550種類以上の野菜や果物を生産し、すでに50以上の賞を受賞するなど、業界のリーダー的存在となっています。
さらに、アラブ首長国連邦(UAE)では世界最大級の垂直農業研究センターを建設し、2022年にはアメリカ・バージニア州に巨大な垂直農業施設を開設するなど、グローバルな展開を進めています。
防災テックでお悩みの方は日本BCP株式会社にご相談ください
この記事では、防災テックと気候テックの違いやそれぞれの事例などについてご紹介しました。
防災意識とIT技術がともに高まっている現代、防災テックは非常に重要なものになっていくでしょう。
もし現在、防災テックについてお悩みの方は、日本BCP株式会社にご相談ください。
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