災害対策基本法とは?法改正内容・災害救助法との違いを解説

災害対策基本法は、災害発生前から発生後まで、国や地方自治体などの各機関がどのように対応すべきかを定めている法律です。
この法律は6つの概要に分かれていて、機関ごとの責務や策定すべき防災計画の内容、財政に関する内容などが定められています。
この記事では、災害対策基本法の概要や法改正の内容などについて詳しく解説します。
災害対策基本法とは?
災害対策基本法は、災害が発生した場合に国民や国土を守るための規則を定めた法律です。
国や地方公共団体、企業などのさまざまな立場の人々が果たすべき役割を明確にしています。
1959年の伊勢湾台風で受けた甚大な被害をきっかけに制定されました。
主な内容は以下のとおりです。
- 避難計画の策定
- 災害時の体制の構築
- それぞれの機関の連携体制の構築
災害対策基本法は災害が発生しても、迅速に正しい対応を行い、被害を最小限に抑えることを目指しています。
災害対策基本法の概要
災害対策基本法では、大きく分けて6つに分類されます。ここでは、この法律の概要について詳しくご紹介します。
防災に関する責務の明確化
災害対策基本法では、国や地方公共団体、企業などの各団体ごとの責務が明確です。
国や地方公共団体は、災害が発生した時に迅速に対応するための体制を整える責務があります。
また、企業には事業を継続させたり社員の安全確保を図ったりする責務があります。
そして、住民一人ひとりにも、防災に対する意識を高めて対応を行うことが努力義務として定められています。
このように、それぞれの役割を明確にすることで社会全体で災害のリスクを最小限に抑えることを目指すのです。
防災に関する組織
防災に関する規定として、災害が発生した際に発足される組織の設置について定められています。国や地方自治体ごとに防災担当の部署や機関の設置が必要です。
国の場合は内閣府が防災の調整を担い、地方では市町村や都道府県ごとに防災担当の部署が災害時の対応や計画策定を担当します。
また、災害対策本部が各レベルで設立されます。このような組織単位のはたらきによって災害発生時の混乱を最小限に抑えることを目指します。
防災計画
災害対策基本法では、それぞれの機関が防災計画を策定する責務があります。具体的には以下のとおりです。
- 中央防災会議:防災基本計画を策定して全体の防災対策を統括
- 指定行政機関・指定公共機関:防災業務計画を立案
- 都道府県・市町村などの地方自治体:地域防災計画を策定
このように災害が発生した時にすぐに対応ができるよう、国や地域を限定せず全ての機関に防災計画を立てる責務があります。
災害対策の推進
国や地方自治体が防災活動を積極的にできるように、各機関の役割や権限が規定されています。
防災教育を充実させたり防災訓練を実施したりすることで、災害に対する知識や対応力を高めることが目的です。
防災対策の一環で防災訓練を行えば、緊急時に即応できるスキルが身につきます。
また、各機関が連携して災害に備えることで、国全体の防災力が上がり、災害対策の推進が実現します。
財政金融措置
災害対策基本法では、災害対策に関する費用は原則、実施する責任者が負担するように定められています。
しかし、甚大な被害が発生した場合は負担しきれないことも。
その場合は地方公共団体に対して国が特別に財政援助を行ったり、被災者に対して助成したりすることが規定されています。
昭和37年に「激甚災害に対処するための特別の財政援助等に関する法律」が制定され、大きな被害が発生した場合に国が行う財政支援の枠組みが整備されました。
円滑に復旧できるよう、被災地や被災者に対しての経済的支援が実施されます。
災害緊急措置
大きな災害が発生した際に国の経済や社会に大きな影響が出る時には、内閣総理大臣が「災害緊急事態」を宣言することができます。
この宣言が出されると、国会が開かれていない時でも、内閣が必要な対応をとることができます。
例えば、未払金支払いの延期や国民の生活が混乱しないようにするための特別な措置を決めるなどです。
これにより、災害発生後も、国全体が秩序を保って、被災者やその他への影響をできるだけ少なくするための仕組みが整っています。
災害対策基本法の法改正の内容
災害対策基本法は、数年に一度のペースで法改正が行われています。
ここでは、直近に行われた法改正の内容についてご紹介します。
令和3年(2021年)5月の改正内容
令和3年(2021年)5月の改正では、避難に関する大きな変更がありました。
以前は「避難勧告」と「避難指示(緊急)」が使われていましたが、違いが分かりにくく、住民が混乱することがあったため、「避難勧告」がなくなり、「避難指示」に一本化されました。
また、災害が発生したことを知らせるレベル5の警戒レベルも「災害発生情報」から「緊急安全確保」に変更されました。
この改正により、避難がよりスムーズに行えるようになり、自然災害が増えている状況への対応力が高まったとされています。
令和5年(2023年)5月の改正内容
令和5年(2023年)5月の改正では、災害が起こる前に道路の通行状況を確認できる新しい規定が追加されました。
これまでは災害が発生してからでないと、緊急車両以外の車の通行を禁止したり制限したりできませんでしたが、この改正によって災害が起こる前にあらかじめ通行を制限したり禁止したりできるようになりました。
災害時に必要な車両が必要な場所に早く行くための改正となりました。
放置車両への対策(2014年、2016年)
平成26年11月に行われた改正では、大規模災害が発生した時に道路上に放置された車への対策が強化されました。
首都直下型地震などの大きな災害が発生した場合に放置された車や立ち往生した車両が発生すると、消防や救助活動、緊急物資の輸送が妨げられる可能性があります。
従来の道路法では、このような非常時の放置車両への対応が十分ではなかったため、この改正で、道路管理者が緊急時に車両を速やかに撤去できる仕組みが整いました。
災害対策基本における警察の役割
災害対策基本法において警察は、消防や自衛隊と一緒に以下の役割を果たします。
- 避難の誘導
- 救助活動
- 行方不明者の捜索
- 被災地での犯罪を防ぐためのパトロール
- 防犯指導や広報活動
- 検視や身元確認
- 交通の整備なども
災害が発生した際には、災害警備本部が設置され、被害状況の把握や情報収集が行われます。
また、機動隊が派遣され、衛星通信を使って被災現場の映像を配信し、迅速な情報共有を行うことができます。
もし、市町村長が避難指示を出せない場合には、警察官が代わりに避難指示を行うことも可能です。
災害対策基本法と災害救助法の違い
災害対策基本法と災害救助法は、いずれも災害発生時の対応に関する法律ですが、役割や目的が異なります。
災害対策基本法は、災害に対する対策から発生後の対応まで、広い範囲の災害対策全般を規定しています。
具体的には、避難計画の策定や災害時の体制の整備、緊急時の各機関の役割を明確にすることが主な目的です。
一方で災害救助法は、災害発生後の被災者の救助と生活支援に焦点を当てています。
食料や生活物資の提供や避難所の設置、住居の仮設など、被災者の生活を取り戻すための支援が含まれます。
このように、災害対策基本法は災害全体の対応、災害救助法は被災者支援に特化している点が大きな違いです。
災害対策でお困りの方は日本BCP株式会社にご相談ください
この記事では、災害対策基本法の概要や法改正内容などについて詳しく解説しました。
災害対策基本法を元に各機関がそれぞれのできることを行うことで、被害を抑えたり日常生活を早く取り戻したりすることができます。
しかし、災害対策を何からはじめれば良いのか、どのような内容の災害対策を策定すべきか、方向性が定まらない場合があるでしょう。
このように災害対策でお困りの方はぜひ日本BCP株式会社にご相談ください。
災害時に行うべきことを明確にして、緊急時に役立つ対策を考えていきましょう。
一覧に戻る